昔々あるところに、たいそう立派な女王が治める王国があったんだと。
王宮の入り口には門番として、いかめしい兵隊たちが王国に出入りする者をきびしく見張っていました。
王国の若者たちは毎日毎日、王宮の外に出かけ、わき目もふらず一生懸命働いておりました。
ある時ふと、1人の若者が、自分は国のためとはいえ、こんなに働き詰めでよいのだろうか、という疑問が心に生じました。
若者は同僚にそっと相談してみました。
1人目の同僚は、働くのが当たり前、そんな事は考えた事もない、と手を休めずに答えました。
2人目の同僚は、これが自分達労働階級の運命なのさ、と取り合おうともしません。
3人目の同僚は、我らが女王様に尽くす事に誇りとやりがいを持っている、と目を輝かして答えました。
同僚たちの話は若者を納得させるものではありませんでした。
若者は次に王国の門を守る衛兵に聞いてみました。
衛兵は、それぞれの役目がある、俺たち衛兵は命を張って国を守るのが仕事だ、
お前たちは王国の外で狩りをしたり、国のために食糧や物資を運ぶのが役目なのだ、
それぞれが決められた運命なのだから従うしかないのだ、と。
若者は今度は大臣に相談してみました。
大臣は立派なひげを撫でながら言いました。
生き方に悩むのは苦しいものだ。時には心のあるがままに行動してもよいのでは?
若者は休暇を取り、独り旅に出てみました。
最初のうちは楽しくて仕方がありません。
それでも日が経つうち気持が落ち着かなくなりました。
あれだけ労働に疑問を持っていたのに
遠くから一生懸命働いている同僚をみてうらやましく思えたり。
王国に戻った若者は最後に、思い切って女王に悩みを打ち明けてみました。
女王様、私は自分の心を偽らずにありのままに生きてみたいのです。
私はいったいどうすればよいのでしょう?
女王はやさしく語りかけてくれました。
お前は蟻なんだから「ありのまま」でよいのだよ。
とっぺんぱらりん。