以前、ウソップ物語をアップしましたが、今度はその日本版を。
第一弾は「コブ取り爺さん」。
正直爺さんと強欲爺さんの物語として知られています。
さて、今回は・・・。
昔々、あるところに頬に大きなコブがある二人の爺さんが住んでおったと。
爺さんAはある日、山に芝刈りに行き、運悪く降り出した雨を避けるため、
木のウロで雨宿りをしているうち寝込んでしまったんだと。
賑やかな声に目がさめると、なんと自分の目の前で鬼たちが焚き火を囲んで酒盛りをしておった。
爺さんはあまりの恐ろしさに身を縮めて息を潜めておったんだが
一匹の赤鬼が、なんか人間の臭いがするおに、と言って鼻をピクピク鳴らすと、
青鬼が、ああ、こんなところに人間がいるおに、と焚き火の前に爺さんを引きずり出したんだ。
爺さんは恐ろしさに震えておったが、鬼が言うには、
そんなに怖そうな顔をしていてはせっかくの酒が不味くなるおに、面白い歌でも唄えおに、
そうでなかったらお前の命の次に大事なものを奪ってやるおに、と。
爺さんは仕方なく震える声で歌ったが、それを聞いた鬼たちの機嫌はどんどん悪くなり、しまいには
こらあ、お前の命の次に大事なものはなんだおに!と怒鳴ったんだと。
爺さんは、このコブが大事なものなんじゃ、と泣きながら言ってみた。
すると鬼たちはコブをえいっともいでしまった。
爺さんAは痛さに耐えながら命からがら家に逃げ帰ったもんだ。
翌朝、隣の爺さんBが、コブのない爺さんAにその事情を聞いてみた。
爺さんBはその晩、さっそく木のウロに身を潜め、鬼たちの酒盛りが始まるのを待ったんだ。
酒盛りが始まり、鬼たちは爺さんBに気づき、今度こそはと歌を所望した。
爺さんBは歌も踊りもソツなくこなし、鬼たちはそれに大喜び。
いやあ、楽しかったおに、礼にお前たちが命の次に大事にしているものを返してやるおに、
と爺さんAからとったコブを爺さんBのもう一方の頬に移植してしまったんだ。
家に戻ってしばらくすると、爺さんAは無理やりもがれたところが化膿して死んでしまった。
一方、爺さんBは生体移植で拒絶反応を起こし、鬼に付けられたコブはポロリと取れ、
命は助かったんだとさ、トッペンパラリン。
爺さんAは正直者でもなく、普通の人。鬼たちを欺いた罰がくだり命を落とす羽目に。
一方爺さんBは強欲でもなく、普通の人。コブを取ることには失敗しましたが命拾い。
普通に生きていても人生どうなるかわからない、というよくある話?