猫の草子があるならば鼠の草子もあります。
こちらのストーリーは少々哀しいものとなっています。
主人公は鼠の権守(ごんのかみ)。
この六つの世界を生きとし生けるものは前世の行いによって輪廻転生すると言われています。
考え、権守は人間の姿になり、首尾よく夫婦になり幸せな生活を送ります。
が、これが結局バレて女房は他の男の元へ、権守は願い叶わず仏道の道に入るという結末。
さて、新鼠の草子は。
鼠の忠太郎は六道でいう畜生道にいる身であったと。
どうしても人間道に生まれ変わりたいと願い、毎日毎日善行を積んた結果、
憧れの人間界へと生まれ変わることができたもんだ。
でもこの人間界、なにせ四苦八苦の世界、生きていくために前世の鼠の習性の盗み食いの罪を繰り返し、
結局修羅道へ堕ちてしまったんじゃ。
商魂だけの姿になって飛び回るものなど、来る日も来る日も戦いに明け暮れていたそうな。
そんな中忠太郎は戦いもせず、じっと瞼を閉じて母親の姿を思い浮かべていたりしたもんだから
戦い放棄という事で餓鬼道に堕とされてしもうたんじゃ。
餓鬼道は飢えと渇きの世界。餓鬼道ではいくら飢えても何も飲めないし何も食えません。
忠太郎は苦しんでいる餓鬼たちを集め、お前たちが苦しみから逃れる唯一の方法は
タコのように自分の手足を食うしかない、と言ったもんだ。
忠太郎は根も葉もない人を食った話をした罰として地獄界に堕とされてしもうた。
さて地獄界の忠太郎、今まで輪廻転生してきたおかげですっかり世慣れてしまったんじゃ。
ネズの番、針の山でもハリネズミ、地獄での働きはまるでコマネズミ。
その働きぶりに、閻魔大王はのたもうた。
これ忠太郎、お前の地獄での働きに免じて、天上界に送ってやろう。
これに忠太郎答えて曰く、
大王様、それには及びません、私はかつて天井(てんじょう)に住んでおりましたから。
トッペンパラリン。