今回の創作は落語「目黒のさんま」の盗作で、「讃岐の手打ちうどん」
ある日のこと讃岐の殿様、お伴を引き連れて鷹狩りで訪れた先で、
百姓が昼餉にうどんをすすっている光景に出くわしました。
ちょうど小腹が空いていた殿様、「これ三太夫、あの白き紐のようなものはなにか?」
「ははー、お恐れながら民百姓が食するうどんというものにてござりまする」
「さようか、うどんとな、苦しゅうない、そのうどんなるものをもて」
「しかしながらあれなる卑しい食べ物は・・・」
「これ三太夫、先代も腹が減っては戦はできぬと申していたであろう、うどんをもて」
こう言われてはいたしかたがありません、事情を百姓に説明をし、
うどんをうやうやしく殿様の御前に。
殿様は普段からお毒味を通した冷めたものしかいただいておりません。
挽きたて打ち立て茹でたての三立ての熱々うどんをいただくのは生まれて初めてのこと
鷹狩りでエネルギーを消費している事も手伝って、しこしこと腰のあるうどんのうまいこと。
「これは美味なるもの、三太夫代わりを持て」と三杯もたいらげてしまいました。
お城に戻ってからもうどんの味が忘れられません。
そう思い詰めると、寝ても覚めてもうどんの事ばかり、
ついに普段の食事が手に付かなくなってしまいました。
典医に見せても原因がわかりません。
床に臥せった殿様、三太夫を呼び、耳元でかぼそい声で言うには
「三太夫、うどんを食したいぞよ」。
これを聞いた三太夫、殿様のことばを無視するわけにもいかず
城下に人を走らせ打ち立てうどんを調達、
これを御賄い方に調理させたのですが家来衆は殿様の体に障ってはと
よ~く茹で、讃岐うどん特有の腰はどこへやら、
熱いものもよろしからぬと冷まして出したものですから
これを口に運んだ殿様、「かような腰抜けはうどんに非ず、即刻手打ちにいたせ」・・・。
お後がよろしいようで。