かれこれ40年以上前、渋谷の場外馬券売り場で予想屋の仕事ぶりを楽しく拝見させてもらったた事があります。
当時はどこかすさんだような独特な雰囲気を醸し出していた場外馬券売り場、床にはハズレ馬券や赤鉛筆でチェックされた競馬新聞が散乱してましたっけ。
調べてみるとJRAとなった中央競馬は公の場での予想行為は認めていないようなので過去の遺物となった感のある馬券売り場での競馬予想屋。
縄張り(?)に陣取った予想屋がそれぞれの予想方式で当日のレース予想方法を披露していました。
当たり馬券をこれみよがしに並べている予想屋の口上を覚えています。
科学的なのか非科学的なのかよくわからない内容ですが、人の心理を突いた、巧みな誘導技術は観察するのに興味は尽きません。
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さてお立合い、皆さん馬券はとれたのかな?
とれていればここにはいない、しけた面だらけだな。(苦笑する聴衆・これでつかみは成功)
(小冊子を取り出して)
さてこの○○式予想システム、的中はするが使い方を間違ってはだめだよ。
朝一番からやらずに第1レースはあえてはずすよ。
第1レースは新馬も多いので予想システムには乗りにくいんだ。
あわてる乞食はもらいが少ない、まずはじっくり様子見だ。(なんだか正しいような事を言う心理作戦開始)
さて、大事なのは第1レースの結果だよ。
今日の第1レースの結果をみてみよう。
3-7だ。
そこでこの○○式予想システムの3の項目をみてみよう。(乱数表のような数字が並ぶ小冊子を開く)
御覧の通り9-2だ。これが次の第2レースに買う馬券。
ここで欲かいちゃいけないよ。まず単勝を買ってみる。(手堅さを示す)
第2レース、9で配当が36倍だ。
この通り、これが的中馬券だよ、と陳列してある実物を誇示。(前もって一通り全部買っておけばどれか当たり、8倍程度で元はとれる)
(実物の当たり馬券を目の前にして聴衆は徐々に身を乗り出す・・・。)
次の第3レースは3-7。これをプラスになった3500円分を買う。
欲かいて過剰投資は大けがの元だよ。(身に覚えがあるので大納得)
さて結果は?
配当は5600円だ!儲けは33万と6000円!
ここですでに33万円のプラス。ここでやめても十分だろ。(そりゃそうだ)
やめてもやってもそれはあんたの裁量におまかせだ。ちょっと贅沢して飲んで帰るもよし、儲かった分を再投資してもよし。(確かに)
(ここで札束をこれみよがしに見せつけ、聴衆はもう目の色が変わっている・・・。)
さて、今日はまだ10レースまであるよ。
今からでも遅くはない、正規品は2万5000円だけれど今日は特別、1万円で分けるよ!
すかさずサクラが1万円札を出して買って見せる。
なかには高熱にうなされるように、なんの意味も持たない小冊子を1万円で手に入れる人もいるようで。
我に返ってみると、そんなに当たるんだっら1万円で売ったりしなくても、はじめから自分で当たり馬券買えばいいじゃん、となるんですけどね。
詐欺は一種の熱気を作り出し、我に返る隙を与えないというのが鉄則です。
歳末大売出しの熱気の中、冷静な判断を下せなくなるのと一緒かと。
世の中特殊詐欺の毒牙にかかる高齢者が絶えません。
カネの話がでたら、認知機能テストの要領で、札束をくわえたサギをイメージするようにするのがよいかも。
いっそのこと試験に「金」「詐欺」「カード」「暗証番号」「電話」「タンス預金」「コンビニ」「ATM」などのイラストを加えてみたらどーなんでしょ。