最近、革新のない伝統芸は伝承である、と思うようになりました。
例えば陶芸の世界。有名な窯はいくつもありますが一子相伝の場合も少なくありません。
父から子へ、子から孫へと何かしらが受け継がれていきます。
ただ何代○○と名前を受け継ぐだけではなく、代々の技法や思想も受け継ぎます。
しかしながら、それらを伝承するにとどまらず、伝承内容に自分なりのアイディアや新しい技法を加味して
それぞれの代で自分なりのものを確立するように思えてなりません。
その連綿たる努力が伝統芸になるのだと。
歌舞伎の世界も同じですね。
受け継ぐ方は先代の芸を消化しつつ、それに自分なりのものをプラスαして一芸に仕立て上げていく。
人は身体能力も姿格好も考え方もそれぞれ個性的ですから、先代の芸をそっくりそのままコピーするだけ
というわけには行きません。
原型を留めながらも常に革新がもたらされているもの、と思うわけです。
悪く言ってしまえば伝承はただ模倣していれば済むこと、自分の考えをあえて加える事は必要ありません。
その結果時代の波間に消えて行く、という現象も起こりえます。
伝統芸は生命体のように、しぶとく生き抜く知恵を発揮するもの、だから何百年も生き残っているのやも。
一方では、何があっても絶対に内容を変えない、という頑迷な思想のもとに伝統を守っているものもあります。
宗教行事などはこれに類するものかも知れませんが、これは伝統芸と伝統行事の違いかも知れません。
伝統行事は変えないところ、変わらない事に価値がある、のやも。
片や伝統芸、うがった見方をするとこちらは結果的に革新の塊みたいなものかも知れませんね。