以前、太鼓とことばについて書きました。
日本の音楽は口唱歌という、口伝で伝える事も多いようですね。
雅楽の世界では龍笛はトールラトールロとか、能の笛、能管ではオヒャアオヒョーイと
か。これは笛の音を表しています。
太鼓も楽譜はあるのだけれど、表記はドンとかテレツクとかデレスケ、ドコドコ、タツツ
とか様々。しかし、文字にするとそのニュアンスを伝えるのがなかなか難しいです。
記譜法も統一されたものがあるわけではなく、楽譜に書かれたものだけでの完全な演奏は
不可能といってよいでしょう。
太鼓の楽譜からは曲想とか、テンポとか微妙なニュアンスが伝わり難いのは確かでしょ
う。
口唱歌はその点、曲のニュアンスを伝えるのにもってこいの方法なのです。
強い調子、やさしい調子、リズム感、休符等々楽譜だけからは読み取れないものが伝わり
ます。
そういう意味で太鼓の口唱歌は詩の朗読と同じではないかと思う今日この頃。
詩の棒読み(そういう演出もありますが)では人の心に響いてこない。
棒読みの口唱歌はおもしろいことに太鼓も棒読みの音が出てきます。
あたかも詩の内容を理解して、それを声に出してみるように、曲想を理解して、それを音
に出してみる。
そのための手段としての口唱歌は必要かつ、大切なものであると思います。
ていねいな口唱歌はていねいな音、元気な口唱歌は元気な音。
逆に言うと、口唱歌ができればその通りに音が出せるということになりますね。
今は亡きジャズピアニストのオスカー・ピーターソンがフレーズを口ずさみながら演奏し
ていましたが、まさに口唱歌そのものです。
口唱歌ができれば曲は打てるけど、曲が打てるからといって口唱歌ができるとは限らな
い。
真の意味がわかっていないと詩の朗読ができないのに似ていると思います。